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完 結 ! \(^o^)/

分かれ道完結編。
続きより本文だぜ!


― 分かれ道 ~ Episode.3
 数年ぶりに見た馴染みの雑貨店は、記憶に残っているそれよりも幾分か古びたように感じる。
古びた、というよりは使い込んだ革素材の小物のように、時の流れを経て深みが増したという表現の方が適切だろうか。
しかし、この店の纏う落ち着きのある空気や、シンプルだが味わいのある外装は何一つ記憶と違わない。
―― 懐かしいな。
 静かに佇む店を目の前に立ち止まり、懐古の情を抱く。
最後にこの店に足を踏み入れたのは確か、悟の死後、2年の時を経て憬が後継として店を再び開いた時だ。
あれからもう4年が経とうとしていると思うと、時の流れの速さを実感する。
 店の中からは微かに人の声が聞こえてくる。
話している内容はわからないが、一足先に中へ入って行った少年と青年が中に居る人物と話しているのだろう。
その相手は店主である憬か、それとも珂月か白夜だろうか。
 期待と不安が入り混じり、緊張で身体が少し強張るのがわかる。
身内に会うだけで緊張なんて、と己の情けなさに思わず苦笑いが零れるが、今さら後戻りはできない。
 私も中に入った方がいいだろうかと思案し始めた時、ドアが開く音がした。
中から現われたのは先ほど店内へ入って行った少年と青年。
「あっ」
 少年が私の姿を認めて駆け寄ってくる。
「珂月と白夜、すぐ戻ってくるって。だから、絶対に待ってて下さいね」
 少年らしい、年相応なあどけない笑顔で告げられた言葉の意図を汲む。
どうやら珂月と白夜は今ここには居ないようだ。
「あぁ、待っているよ」
 そう約束すれば、少年は満面の笑みで頷いた。
「泉里、行こう」
「うん」
 少年が青年の呼びかけに応じ、二人は私の横を駆け抜けて来た道を戻って行く。
恐らく、珂月と白夜を迎えに行くのだろう。
振り返って、二人の後姿を見送る。
嬉しくて居てもたっても居られないと言わんばかりの二人の姿に、自然と頬が緩む。
「尭人さん…?」
 背後からは久しぶりに聞く、懐かしい声。
声がした方へと振り向けば、信じられないといった表情で立ち尽くしている憬の姿があった。
その姿は、一番新しい記憶に残っている姿と比べて、背格好はほとんど変わらない。
だが、纏う雰囲気が少し大人びたように思える。
「……少し見ない間に随分大人らしくなったな、憬」
 そう言って笑いかける。
戸惑っているのだろうか、憬はこちらを見つめるばかりで何も言わない。
事件以来一度も連絡をしていなかった上に、訪問も突然だ。その反応は当然だろう。
続けて反応を待つこと数秒。憬が沈黙を破る。
「無事だったの……?」
「……あぁ、1年ほど前から自由の身だったよ」
 ほぼ予想通りの憬の問いに、自分の置かれていた状況を正直に、簡潔に告げる。
瞬間、憬の表情が強張った。
「だったら…っだったらどうして今まで連絡してくれなかったんだよ!手紙の一つでも出してくれたら珂月と白夜の事知らせられたのに!二人だって…っ!」
 息を詰めたように憬の言葉が止まる。直後に見せたのは後悔と自責の念が覗える表情。
「……ごめんなさい」 
 呟くように零した謝罪を最後に、痛みを堪えるような表情で黙り込んでしまった。
 憬の言い分は尤もだ。この1年余り、少なくとも憬に連絡を取ることができたが、それをしなかった。
それも「弱みを見せたくない」という、今にして思えば身勝手な理由でだ。
こちらの身を案じていた者からすれば、私を責める筋合いは十分にある。
それを責めるどころか、却って謝らせてしまうほど、私は辛い顔をしていただろうか。
「謝らなくていい。お前の言っていることは尤もだ」
 そう言って笑いかけてみるが、憬の表情は晴れない。
元々作り笑いは不得意だ、きっと上手く笑えていないのだろう。
「少し疲れてしまってな…人に会いたくなくなって、この1年間はずっと一人で過ごしていたんだ」
 素直に今までの音信不通の理由を告げると、何かを察したのか、そっか、と一言だけ返し、何も聞かずに済ませてくれた。
気を遣わせるのが申し訳ないと思う反面、その気遣いが今は有難いとも思った。
このまま沈黙が流れてしまっては少々気まずいので、何か別の話題をと考えようとした、その矢先。
「あ、」
 憬が何かに気が付いたのか、僅かに声を上げた。
その視線は丁度、私の後ろ方向、元来た道へ向けられている。
逸る気持ちを抑えながら、憬の視線に倣って振り返る。
 目線を少し遠くに投げた先に、よく似た背格好の人影が二つ。
少し背が伸びたように思えるが見紛う事は無い、片時も忘れた事の無かった子供達の姿。
急いで来たのだろうか、息を切らしているようで僅かに肩が上下している。
突然のことに状況が汲みきれていないのだろう、二人とも呆然とした表情だ。
更に後ろの方では、先ほどの少年と青年が、二人が持っていたのであろう荷物を抱えている姿が見えた。
「……元気そうじゃないか」
 夢にも思えなかった、けれど心のどこかで望み焦がれていた瞬間を目の前にして
ようやく湧いてきた実感に、思わず零れた言葉。
不意に、背中からゆるやかな圧力。
振り向けば憬が私の背中を押していた。
「こんな距離で呟いても二人に聞こえないよ」
 そう言う憬の笑顔に、屈託は無い。
長い事見ていなかった気がする憬の自然な笑顔が、心強く感じた。
 「……そうだな」
 そう一言返して、再び珂月と白夜が立っている正面へ目を向ける。
前へ踏み出し、二人の元へ歩み寄る。
ほんの数歩分の距離と、数秒の時間が妙に長く感じた。
その間も二人は身動きをとる事もなく、こちらを見つめたままだ。
手を伸ばせば届く位にまで縮まった距離で見る二人の目線はやはり以前よりも少し近くなっていた。
「……お父さん…」
「本当に…」
 
 驚きから我に返ったというように、白夜、珂月の順に呟きが零れた。
二人の言葉に応えるように微笑みかける。
「お前たちの友達から聞いたよ。ずっと、信じてくれていたそうじゃないか」
 左腕で珂月、右腕で白夜を包み込むように二人を抱き締める。
「……ありがとうな。珂月、白夜」
 様々な気持ちが込み上げて胸が熱くなるが、これ以上は言葉にできなかった。
すまなかった、辛うじて最後に付け加えた声が震えていたのが自分でもわかる。
 二人はそれに応えるように、身を委ねてくれた。
抱き締めた手で二人の髪を撫でる。
その感触は記憶と違い無く柔らかい。
 肩に掛かる心地よい重みと、腕に抱えた温もり。
 それらが全てを許そうとしてくれているような、そんな気がした。
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何か続きそうな雰囲気漂うけどこれで分かれ道は完結です。
初めて連載ものを形にして書ききったよ!ほめてほめて!!←
双子にはあんまり発言させない方向にしてみた。
色々突然すぎて言葉にならないかなと思って。
尭人父さんが最後に言った「すまなかった」には色々な気持ちがこもってる。
長い間辛い思いをさせたこととか、そうしてしまった自分自身の情けなさとか。
たった一言だけど、双子はそんな気持ちをちゃんと汲み取ってるといいな。
この後は親子(+憬かもしれない)で色々話して、尭人父さんも少し前向きになれるんじゃないかと。
で、最終的には連絡を絶っていた仲間にも会いに行けていたらいいなと思う。
というか、父さんと一緒に開放された仲間≒双子とも面識有りだろうから、一度は双子も会いに行ってそうだ。
このお話以降、親子は一緒に暮らすことはないものの、連絡取り合ったり父さんが時々会いに来たりしてます。
なので未来編になると地味に出番が増えるような気がするお父さんです。
その辺のお話は、まぁいつか書けたら。

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